子供の時期における出っ歯(上顎前突)の治療

出っ歯(上顎前突)を気にされて保護者の方と来院される子供の患者さまは結構多いと感じます。

先日、ある学会から「子供の上顎前突は再治療が必要なので意味がない」という趣旨の発表があり、ガイドラインがWEBで話題になりました。日本で一番大きな矯正学会である日本矯正歯科学会(JOS)からの提言ではないことや、ガイドラインの検証を行う委員に矯正学の大学教授が含まれていないこと(矯正学准教授1名、保存学教授1名)などが問題だと言っている方もいて、少し混乱をしているようです。

子供の出っ歯(上顎前突)は治す必要がないのでしょうか。

先日も出っ歯を気にして高校生の患者さまがお母様と来院されました。もう少し早く成長があるうちに来ていただければ、もっと簡単に治療を行えたと感じました。もちろん患者様と保護者の方にももっと前の時期に子供の治療を行う選択肢があったこと、成長が終わった時期では子供の治療ができないこと、しかし手遅れではなく治療が可能なことをきちんとお伝えして、現在治療を進めています。

気をつけなければいけないのは「子供の治療が必要ない」ということと「大人になるまで治療はしなくて良い」がイコールではないということです。

「子供の治療が必要ない」と言われてしまうと、大人になっていつでも治療ができると判断してしまいそうです。しかし10代後半や20、30代でも同じ治療ができるということではありません。そのガイドラインでも子供の治療が11歳までと定義されています。つまり成長期の治療は否定していないのです。

上顎前突の治療では、治療効果が高い特定の時期があることは以前からヨーロッパの研究などで指摘されています。しかしながら、どのような状態であれば上手く治療できる・できないという研究が確立されていないことが、混乱を招く原因となっています。原因は機能的顎矯正装置(機能的矯正装置)が取り外しのできる不確定な装置であること、患者さんの多様な骨格形態、矯正医の症例・知識不足などが考えられます。

私は大学時代に15年以上にわたりTwinBlock(写真)という当時日本であまり使われていなかった、使い方がわからなかった新しい装置を用いて、多くの症例を診てきました。この装置の特徴は、優れた二級関係(出っ歯傾向)と過蓋咬合(深い噛み合わせ)の改善です。多くの治験例から異なる症例へのアプローチも勉強いたしました。

やはり上顎前突が一概に治療が必要ないとは言えません。また、効率よく直すためには、いつ治療を始めるかが大切です。個々の症例を把握することにより一番効率が良く、負担が少ない治療法をご提案できます。まずは「子供の治療は必要ない」とご自分で判断せずに矯正医にご相談いただき、判断されることをお勧めいたします。